ロイヤーとシロスケの去勢手術-② [犬]
前回(↓)の記事の続きです。
Http://t2mary.blog.so-net.ne.jp/2014-04-29
ご注意:この稿は、人によっては不快を感じる画像が(一応、ドギツイ画像は避けたのですが)、あるかも知れません。 犬の睾丸摘出手術の画像です。心当たる方は、スルー願います。
さて始めに申し上げなければならないのは、ここはフィリピンの田舎です。
人間でも、まともな手術など受けられるすべがない訳ですから、これが犬であればなおさらです。
おそらく日本での犬の去勢手術とは、だいぶ様変わりの様子でしょう。
そもそも担当ドクターはセブ市の住民で、知り合いのフィリピン人の紹介で、こんな田舎くんだりまで出張手術(『ホームサービス』と言います)に来てもらいました。
日本もソコソコそうでしょうが、比国はコネとカネの国です。
ですので、担当ドクター(女医さんです)の名誉のために申し上げますと、彼女のウデはこの国では平均以上なのであります。
まずは仔犬(6ヶ月)のシロスケ・・・・
口輪代わりのロープを掛け、麻酔注射で眠らせ、手術開始。
以上の画像をご覧になればお分かりのとおり、途中までです。
このあと睾丸の摘出や陰嚢の縫合、抗生物質、痛み止めの注射をして終了です。
画像がないのは、私も、ドクを連れてきた知人と一緒に、助手として手術のお手伝いに加わったせいです。
ドクの手際がナニでして、落ち着いて見ていられる状況ではありませんでした。
シロスケが終わって、ロイヤーの番です。
ご存じない方のために申し上げますと、生後2ヶ月で“T2ゆかり”に来て以来、6年以上T2のために働いてきた犬です。
よく言う『家族同然』のロイヤーです。
ロイヤーは、まだ子供のシロスケと違い、非常に賢い犬です。
離れたところからじっと見ていたので、たぶん、自分が次にやられることは察していたはずでした。
ロイヤーは小さいですが力が強いので、暴れるのではと、我々もちょっと警戒しました。
ロイヤーをドクのところに引き立て、口輪のロープを掛け、注射するために抑えるのは私の役目です。
ところが、予想外にロイヤーはおとなしく私に引かれ、私は両膝でロイヤーの前足の後ろを押さえ、口輪を掛け首と固定しました。
(ロイヤーの私に対する信頼感を逆手にとっているようで、いい気持ちはしませんでした。)
しかし、ロイヤーは偉い、〈さすがロイヤー〉としか言いようがありません。
うろたえず、騒がず、抵抗せず、一切、されるがままでした。
注射も痛がらず、堂々と受けていました。
まるで昔の武士のように、毅然とした態度には、感心すると同時に、(私は今、たぶん間違ったことをしているのだ)とかえってこちらの心がオタオタしそうでした。
ドクが対体重の規定量の麻酔を筋注したにも拘らず、数分しても腰砕けにならず、しっかと立っていました。
私が「ロイヤー」と小さく声をかければ、いつものように尾を振って応えました。
『精神力の強い犬だ』とドクが感心し、今度は足の静脈に追加の麻酔を静注しました。
強靭なロイヤーの精神も、この攻撃にはたまらず、足が萎えました。
手術中、ドクは『(陰嚢の)皮がとても厚い』、『タマが大きい、デカイ』としきりに話し、『これじゃ、半年ごとにパフが妊娠するわけだ』と、納得していました。
そして、縫合の際には、『(陰膿の皮が)厚くて硬くて、革靴を縫っているみたいだ』と汗ダクダクで苦戦していました。
私の見たところでは、苦戦の原因は、むしろ縫い針が鈍(なまく)らなせいです。
それから、ドクの眼鏡の度が合っていなくてよく見えていないにもかかわらず、ロイヤーの陰膿の皮膚の色と同じ、黒の縫合糸を使ったので、縫いにくかったせいと見ました。
何度も鉗子が空振りしていました。
ロイヤーが心配だったので、私は途中から、フラッシュライトで患部と糸を照らしました。
にも拘らず、ドクは雑な縫合で手術を終えました。
その縫合は、たぶん、日本の医大生が、授業中、生涯で初めて行った縫合練習の中でも最低の出来のモノよりひどいと思いました。
おかげで術後4日して、シロスケのほうは見た目なんともないのですが、ロイヤーの陰嚢は、玉がないのに玉があった時の倍くらいの大きさに腫れています。
そんな話しはともかく、私が心を打たれたのはこれです。
手術中のロイヤーの目です。
強烈な麻酔のせいで、瞑目できなかったのかもしれませんが、手術中ロイヤーは目を閉じませんでした。
ジッと何かを見つめるような、考え込むような・・・・
かといって、怒りや恐怖の色も認められず、どちらかといえば、喜怒哀楽の心を超越した・・・たぶん、悟りを得た僧が居たら、こんな目をするんだろうなという感じがしました。
反面、私のほうは、なんと言うか〈またひとつ罪を犯した〉様な気分でした。
結局ロイヤーは、(たぶん麻酔のせいだけではなく)手術が終わるまで身じろぎすることもなく、されるがままで、我々に一切迷惑を欠けることはなかったのでした。
人はその飼い犬という『弱者』に関し、[生殺与奪]の権利があるわけではありません。
病気であるならともかく、健康な犬の身体にメスを入れ、生き物としての自然な生態機能を奪い取ることは、決して善ではない様に思います。
遣らずもがなな事に相違はありません。
その理は明快です。
仮にロイヤーやシロスケが人間であったなら、絶対に許されることではないのですから。
欧米や日本では、ペットの飼い犬や飼い猫は増えると面倒が見切れず、困るから、お互いの幸せのため?に避妊や去勢手術をしましょうてな感じのようです。
はたして、それが正しい方法なのでしょうか?
私にはわかりませんが、地球は現在、人類が支配する星ですから、たぶんやむを得ないのでしょう。
私は人間で良かったようです。
ロイヤーと私と、どちらが先にあの世に行くか判りませんが、私にしてみれば、あの世に行ったら詫びる相手が、また一人増えたような気がいたしました。
今回のことで感じたのは、《 飼い主は、自分の犬の去勢や避妊手術に立ち会うべきだ 》ということですね。
巷では、昔と違って、昨今は、欧米風に夫が妻の分娩(=我が子の出産)に立ち会うなんてのがはやっているようです。
同じ発想ではないのでしょうが、飼い主はペットの避妊・去勢手術に立ち会ったほうが良いと私は思いました。
獣医にペットを持参して、郵便局で切手に消印を押してもらうような手軽さで、飼い主は何の痛みも覚えず、ペットを片端(かたわ)にするべきではない、と感じました。
個人的に私は、いわゆる『血を見る』のは全く平気なほうなのですが、このロイヤーの目には、参りました!
追記:きょうで術後6日目、当初はタマ袋が腫れてガニマタ歩きだったロイヤーでしたが、少し腫れは収まってきました。
そして、オカマになって性癖も変わるのではと杞憂したのですが、手術前と変わらず、一晩中T2内を黙々と歩き回り、施設とお客様のガードに勤めています。
ロイヤーは、すごいですね!!
全身麻酔でしたらいいですが、人間の場合は局部ますいですからメスを入れられている所は痛くないのですが、精管を引っ張られる時玉をギュット握られたような痛みが走ります。
ついでに、梅沢さんもやってもらえば良かったのでは?
爆笑
by 打ち首獄門 (2014-05-05 15:02)
打ち首獄門様
コメントありがとうございます。
さすがにこういうネタは、ウンチクがありますね。
ひょっとして、『経験者』ですか?
それから私のことですが、もう年ですので悪さはできません、ご心配なく。
愛犬家の打ち首獄門様ですが、当然全部の犬は処置済みでしょう?
by yashinoki (2014-05-05 20:51)