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フィリピンスタイルのサリサリ経営 [フィリピン]







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T2のお向かいのネタストアー、写真右です。


フィリピン名物?といえば、まず“サリサリストアー”というほどであります。
フィリピン国中、無いところはないように思います。
(注:サリサリストアー=個人経営の小さな万(よろず)屋)


サリサリはフィリピン庶民の文化。
庶民(貧困層)は貯金なんて知らない、宵越しのカネは持たないという人がほとんど、と云うか、そもそもいつもお金が無い人ばかり。
なけなしの金で、必要最小限の品物を買うには、近所のサリサリしかありません。

そして田舎では、もしもちょっと小金が入ると、判で押したようにやるビジネスは決まっているようです。
豚を飼育するか、車両を買ってトライシクルまたはジープニーか、そしてサリサリストアー経営です。
豚の飼育以外は全部日銭の入る商売です。

ですが、一般的には、これら素人のするモンキービジネスはたいていは行き詰って、早ければ3ヶ月、長くても数年で潰れます。
今日のお話、お向かいのサリサリ“ネタストアー”ですが、ここも例外ではありませんでした。





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こんなに流行っていた我がネタストアーにも、ついにその日がやって来たのです。






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数日前より開かなくなりました。
潰れました。
原因は、赤字だそうです。
もっとも、『赤字』という言葉の意味を理解しているかどうかは怪しいですから、『お金がなくなったから』というべきかも知れません。

そもそも、この家の主は“SEAMAN”=〈外国航路の船員〉です。
船員はフィリピン庶民で可能な“真っ当な仕事”としては、人も羨(うらや)む稼ぎ頭(がしら)の職種です。
年に1.2度の帰宅の折には、ガッポリと稼ぎを持ってきます(私が見たわけじゃないですが)。
そのお金の一部を奥方(ネタ)に渡し、サリサリ経営に乗り出したのが7.8年前。
そして2年前からは、その稼ぎ(だんなのシーマンのほうの)で資材を買って職人を雇い、2階建ての豪奢な家を店の後ろに建築中ですが、これが全くはかどらない。
サリサリのほうが大赤字だからと、やっと気が付いたらしい。
毎日朝5時から夜10時頃まで、セブンイレブンも真っ青な営業時間でかなり繁盛していたというのに。

なぜ、儲からないか?

いくら売れても貧民相手、〈掛け売り〉が多いのです。
借りた金を返さないのは、云ってみれば比国では一般常識。
下手に騒げば、ぎゃく切れされて恨みをかい刃傷沙汰。
そうはならなくても、「ケチ!」という評判が立ち、近所中から嫌われる。
この国では“ケチ”はもっとも嫌われる人格です。
だから余程でなければ品物を渡し、更に掛売り額がふくれ上がる。
掛けノートの付け忘れも当然あるでしょう。
もともと計算には弱い国民性ですから、現金買いのお客にも、時々おつりを間違えるでしょう。
お客はお釣りが少ないときは文句を云うが、多いときには『神様がくれた』と思って神様に感謝して黙っている。
(うちのスタッフにも、以前、足し算引き算の出来ない娘がいて、自分で確認できないから、よく変な額のお釣りをもらってきていました。)
家族は、商品をつまみ食いし放題で、ブクブク太っていく。
雇われた販売員も、売り物やお金をチョロまかす。
こういった多すぎる損失に加えて、『善良な店』は、市場で例えば100円で買った品を自分の店で105円で売っていたりする。
コスト計算なんて概念は持ち合わせないので、利益が出て大きくなれるのは100円で仕入れた品を200円で売るような『強欲サリサリ』だけでしょう。
買うほうも、物の正当な値段を知らない人が多いのでそれでも売れるのです。
だから物の値段は売り手によって様々です。
かくして、サリサリから大企業、銀行、国家プロジェクトに至るまで、フィリピン経済は計算高い『チャイニーズ・フィリピーノ』(中国系フィリピン人)もしくは一握りのスペイン系財閥の握るところとなっています。

庶民の良さ?は、すぐ忘れる事。
サリサリの女主人だったネタは、何事も無かったように、相変わらず昼間は近所のヒマジンとマージャン三昧。
近所の人たちも、ネタストアーがなくなっても以前と同じように暮らしています。
買い物は、少し歩いて別のサリサリへ。
サリサリは、4.5分も歩けば何軒も見つかります。
そこで顔が売れたら、また掛買いを始めてその店を食いつぶすだけでしょう。
・・・なんて考えていたら、ネタストアーの斜向かい、つまりT2の隣りの隣りには、すでに新しいサリサリストアーが建設中です。
しかも、そのオーナーはネタの母親!だという噂。
まるでサリサリ経営は、田舎の小金持ちが庶民救済のためにする『持ち回り』か『当番制』の“お仕事”のようであります。

まあこういうサリサリ経営に限らず、フィリピン人庶民のメンタルは普通の日本人には難解なのであります。

私にとってネタストアーが潰れて、確かに良かった事は、ここ数ヶ月、毎晩繰り広げられた狂騒の[違法・無届ビンゴ]が終了した事ですね。





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毎晩10時過ぎまで煩かった違法ビンゴ大会。
T2の客室までは聞こえませんが、ウチの一家の寝室兼居間はカードがあれば参加できるほどウルサかった。














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コメント 4

レンジでチン

喧騒? 騒音? 今度は前からじゃなくて横から響くのですね?(爆)
by レンジでチン (2011-07-23 16:53) 

yashinoki

レンジでチン様
コメントありがとうございます。
え~、残念ながら、そっちの(横の)方向には、トイレ&シャワー室があるので、ビンゴをやられても、以前ほどうるさくない―――たぶんですが―――です。
あいだに廃墟化したチャペルもあるし。
by yashinoki (2011-07-23 17:45) 

Cyoroshi

売り上げは全部儲けだと思っているフィリピン人が多いこと(笑)。
当然儲けたお金は直ぐ使ってなくなり、翌月の仕入れが出来ない。
長く続くわけないですよね(笑)
by Cyoroshi (2011-07-24 14:52) 

yashinoki

Cyoroshi 様コメントありがとうございます。
『売り上げは全部儲けだと思っているフィリピン人』・・・適確な表現です、笑っちゃいますけど、まさにその通りです。
スペイン、アメリカ、そしてフィリピン特権階級政権の愚民化政策、大成功ですか。
by yashinoki (2011-07-24 18:43) 

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